限界集落と母の里

kanazu362008-03-10

9日、都会と町で限界に挑む過酷なレースが展開された。
都会は、北京五輪ラソン代表の最終選考会の
名古屋国際女子マラソンの42.195キロのレース。
残る一つの五輪枠を目指し過酷な女の戦いが。
町は、新潟県松代町の「越後まつだい冬の陣」で
雪の障害物を乗り越え山頂の松代城を目指す過酷な雪上レース。
標高差200m・全長約3.5キロのコースに348人が健脚を競った。
佐渡市鷲崎で住職の傍ら写真家として活躍する梶井照陰(31)の「限界集落」の
出版記念講演会が3月8日、新潟駅南のジュンク堂書店で開催された。
限界集落」という言葉に、やがては消滅するであろう過疎地の
母の里、上越市高田宇津尾集落とダブリ哀愁の念にかられ講演を聴いた。
・梶井照陰「限界集落」講演
 写真家梶井さんは、地元佐渡の波を撮り続け写真集「NAMI(波)」で2005年
 日本写真協会新人賞を受賞した。
 今回は、限界集落の実情に真っ向から取り組み「限界集落」を出版した。
 地元佐渡を始め、北は北海道から南は九州熊本まで全国12カ所の過疎と高齢化が
 進んだ地域を回り、現地の人々の生活を写真に収めた。
 限界集落とは、65歳以上の高齢者が住民の半数以上を占め、共同体の維持が困難と
 なっている集落を指す。
 2006年の国土交通省の調査によれば、限界集落は全国に7878カ所あり、
 今後10年以内に423集落が消滅するといわれている。
 梶井さんの住む佐渡鷲崎も高齢化の波をじかに感じる。
 近隣では、高齢者が集落の70%以上になった地区もあり、空き家も目立ち始めていると。
 撮影した写真をプロジェクターで大画面に映し出しながら、北海道の戦後開拓村・
 福島県新潟県の鹿ノ瀬と豊美・東京・九州熊本の山奥などに足を伸ばした。
 北海道の戦後開拓村ではテレビもなく高齢者は、安保闘争学生運動なども知らないと。
 梶井さんは、「日本は食料自給率が他の国と比べて非常に低いのが問題。輸入食料に
 頼った結果、戦後日本を支えてきた地方が切り捨てれれてきた。
 このままでは第一次産業全体がさびれる。自分たちで食料を作って、自給できる状態に
 していかなければならない」と危惧する。
 「今後も限界集落についての実情を伝え続けていきたい」と。
 話しを聞き東京都にも限界集落があることを知った。
・母の里上越市高田宇津尾集落
 亡くなった母の里上越市高田宇津尾集落も限界集落である。
 上越市が、2006年11月中旬から1カ月かけて調査した、過疎集落実態調査結果を
 2007年5月25日発表した。
 調査対象集落は、2006年3月末現在で65歳以上の高齢者が半数以上を占める
 53集落(7800世帯・1739人)。
 国土交通省外郭団体である日本地図センターではインターネットで全国の町名単位で
 「地域の人口推移や気象」等の統計情報を提供している。
 2006年の統計によれば、懐かしい母の里宇津尾集落は5世帯8人。
 実家で暮らしていた母の兄夫婦も高齢を理由に昨年10月集落を離れ町に出た。
 母の生家は、今は空き家で住む人はいない。
 村は空き家が点在し、今は3世帯5人が集落で暮らす。
 やがては集落も消滅の危機に。
 戦国時代、宇津尾集落の西方裏山に宇津尾砦(山城・標高280m)があり地元民は
 頂上近くを通る古道を「謙信公の軍道」と呼んでいた。
 高田市史によれば明治初年ごろ宇津尾集落には鉱泉宿が2軒もあり、その内の1カ所は、
 200人くらい収容できるほどの大規模なものであつたと伝えている。
 母は生前、鉱泉宿を経営していたと話していた。
 子どものころ母の生家に遊びに行ったが、集落には鉱泉宿などはなかった。
 ただ田圃の一角に鉱泉の出る場所があったのを記憶している。
・消えた村の記録角海浜物語(斉藤文夫著)
 巻町福井に住む斉藤文夫(74)さんが「角海浜物語―消えた村の記録」の著者。
 2006年12月巻町郷土歴史資料館で開催された「角海浜村と毒消しの里展」で
 知り合った。
 角海浜村史には、
 1607(慶長12年)250戸 1675(延宝3年)233戸
 1688(元禄3年)200戸 1902(明治36年)92戸
 1902(明治36年)72戸 城願寺出火で民家20戸焼失
 1935(昭和10年)42戸 128人 1955(昭和30年)28戸 28人 
 1969(昭和44年)9戸 16人 角海浜村に原発建設が報道
 1971(昭和46年)4戸 6人 原発離村第1号
 1974(昭和49年)2戸 4人 7月28日最後の住人離村し0人、廃村
 1975(昭和50年)0戸 無人古家を取り壊し
 と廃村までの経緯が書かれたいる。
 斎藤さんは、新潟さくらカラーに勤務後、巻町でDPE店を営みながら、暇さえあれば
 角海浜に通い写真を撮った。
 約40年にわたり村人と深く交流しつつ過疎化が進み消え行く村の終焉を記録に残した。
今後10年以内に423の集落が消滅するといわれる。
梶井照陰さんの「限界集落」、斉藤文夫さんの「角海浜物語―消えた村の記録」。
2冊の写真集が、限界集落とは無縁の人たちに警鐘を鳴らし続ける。
今日もどこかで新しく限界集落に仲間入りする集落が。
そして何時の日か、集落は消滅する。
しかし、消滅した集落は写真集の中に生き続ける。

あぁふる里が消滅する (イラストを模写)